デザイン経営とは?国が推進する最先端の経営の方法を簡単に解説

2018年から国が主体となって推進している「デザイン経営」って言葉はご存知でしょうか?

名前の通りデザインを経営に取り入れようという事で、経済産業省と特許庁の研究会が出している「デザイン経営」に関するスライドがあるんですが、大抵の人はPDFのスライドって読む気しないと思います。

そこで今回はデザイナーの私が読み解いて分かりやすくまとめ直して簡単に「デザイン経営」の事を解説していこうと思います。特に中小企業の経営者の方にとってはかなり大切になる考え方だと思いますよ。

参考URL:「デザイン経営宣言」「デザイン経営ハンドブック」/ 経済産業省・特許庁

デザイン経営って何?

デザイン経営:デザインを企業価値向上のための重要な経営資源として活用する経営の事

つまり「経営チームの中にデザインの専門家が入ってデザインも重要な柱にする」という事です。例えば、製品を作り上げて広告の時にだけデザイナーにお願いする様な感じのやり方ではないって事ですね。

具体的にどういう企業がデザイン経営をできているかという基準は下記2つを守れているかが大切です。

① 経営チームの中にデザイン責任者がいる事

② 事業戦略構築の最上流からデザインが関与する事

経営チームの中にデザイン責任者がいるというのは「CEO・CTO」等の役職に加え「CDO:Chief Design Officer」や「CXO:Chief Experience Officer」という役職があるかという事ですね。

CEOはいわゆる社長なので企業には確実にいるんですが、CTO(Chief Technology Officer)も認知されて多くの企業で経営チームに採用されていますがそれに加えてデザインの専門家もポストを持って、経営面の部分からデザイン的な思想を導入していくのが「デザイン経営」の方向性になっています。

デザイン経営をする事のメリット

▸ブランド力とイノベーション力が向上する

・ブランド力が上がる:他の企業ではダメ(代わりにならない)だと思われる(長期的な関係維持)

・イノベーション力が上がる:ニーズから出た発明を実用化する事が可能(顧客視点を取り入れる)

デザイン経営宣言で大きく掲げられているのはこの2点で、確かに経営の重要なポイントだと思います。

最終的には「デザインに投資→デザイン力が上がる→ブランドとイノベーション力が上がる→競争力が強化→デザインに投資」というループを目指しますが、ブランドとイノベーションが企業の力になります。

デザイン経営とお金・数字の問題

▸「デザイン経営って具体的に売り上げ何%アップするの?」

デザイン経営をするという段階になると大きな問題があって「経営陣のデザインに対する理解不足」と「デザインの効果を定量化できない(数字で表せない)」というのがほぼ確実に挙げられる問題ですね。

経営陣がデザインに対して懐疑的になるのも根本的には効果が数字で測れないという事が原因になっている場合があるので、そのお金とかデザインの価値という事について多めに補足で解説をしていきます。

・デザイン経営だったりデザイン自体を取り入れた事で売り上げが何%アップするの?

デザイン経営に理解の無い経営者が考えるのはこういった疑問です。ちなみに効果を数字で回答することできて、British Design Councilが出しているデータでは、1ポンドのデザイン投資に対して利益は4ポンド・売り上げは20ポンド増加したという結果が出ています。つまり利益は4倍になるという事です。

他にもデザイン重視の企業の株価が10年間で2.1倍成長という結果もありますが本質ではありません。

本質的な回答としては「デザイン経営を導入する理由がそもそも数値化されていない価値をビジネスに取り組む為なので定量化する事は難しい」という事です。なかなかこの部分を理解してる人は少ないです。

デザイン経営を取り入れなくても獲得できるような部分は既にやっている数字を主体とした戦略で取れるはずで、そうではない部分を伸ばす為にデザインを取り入れるので数字では語れないよねって事ですね。

数字ばかり見ていると人を見れなくなって人に相手にされなくなります。定量化が難しかったり数字には表れないニュアンスや価値観等が企業と人との懸け橋であってそれを担えるのがデザインという事です。

▸従来のビジネスモデルでは通用しなくなっている

日本はハードウェア産業が強かったのですが、現在主戦場はソフトウェア産業の方へ移行しています。

その移行に伴って、日本は海外と違って「デザイン」が有効な経営手段と認識されていなかったのがかなり痛手で、今になって「デザイン経営」というモノが推奨され始めている原因の1つでもありますね。

ソフトウェアでの戦いではユーザーの「体験」が最も価値を持っていて、ユーザーの体験のクオリティーを高めるためにはデザイン自体の力だったりデザインシンキングが非常に大切になってくるワケです。

・デザインシンキング:デザイナーが培ってきた手法や思考をサービスやシステム設計に用いる事

1950年代まではデザインとは見た目の美しさを表していて、1970年代になってデザインは消費者のニーズに応える事になって、現在はデザインシンキングを取り入れる事がデザインの役割になっています。

デザインシンキングを取り入れるためには経営チームの中にデザインの専門家がいる事が必要で、デザインシンキングをする事でユーザーのニーズを引き出して得られる「体験」の質を上げる事が大切です。

こういったビジネスの姿勢を作る中でどんどんと企業の個性・らしさが出てきてそれがブランドとして確立していって会社自体のインナーブランディングつまり文化にもなっていくというのが流れになります。

具体的なデザイン経営の方法・やり方

①デザイン責任者を入れる

②開発初期からデザインが参画する

③デザイン経営推進組織の設置

④デザイン手法による顧客の潜在ニーズの発見

⑤アジャイル型開発プロセスの実施

⑥採用および人材の育成

デザイン経営宣言の中で挙げられているのはこの6つですが、①・②・③・④についてはこれまで解説してきた通りです。ここでは⑤のアジャイル型開発プロセスと⑥採用・人材の育成についてお話します。

▸アジャイル型開発プロセスとは?

アジャイル型開発プロセスというのは簡単に言えば最初から厳密な仕様を決めずに、トライ&エラーを繰り返しながら開発を進めることを言います。顧客のニーズを探りながら進められるのが良い部分ですね。

トライ&エラーの開発プロセスでは「Build to Think(考えるためにつくる)」という言葉もある様に、ユーザーが自分ですら気づいていない様なニーズを作りながら考えていく事でそこにストーリーが生まれ、そういったストーリーを語る事で、ユーザーもまるで自分の為につくられた様な感覚を覚えます。

デザイン経営はデザインが開発の上流から入ることでこのアジャイル型開発プロセスの実践が非常にやりやすく、現代のソフトウェア関係のサービス展開に関して非常にマッチしているやり方になっています。

▸デザイン人材の採用と育成について

日本の大企業64社・中小企業32社(全96社)にアンケートを行った結果として下記項目を実践している割合が示されています。結果は置いておくとして、かなり積極的に取り組んでいるのが分かります。

・デザイン責任者が経営に参画:約60%

・デザイン推進組織の設置:約63%

デザイン経営の為には、外注という形ではなくデザインの専門家に会社組織に入ってもらって進める必要があります。ただし、中小企業ではなかなか人材の確保に使える予算なども厳しいのが現状と思います。

国の施策としても補助制度を導入したりする様ですが、例として挙げられてたのが「デザインの研究開発を対象とした補助金」だったので、直接的に人材やデザインの補助金を得られるワケでは無さそうです。

個人的には企業を立ち上げる段階からデザイン補助金を出して、デザイナーにロゴやビジュアルアイデンティティーを外注する事で経営者がデザインのユーザーとなる事から始めるのが良さそうだと思います。

他にも、例えば正社員としてフル出勤してもらうのではなく、経験のあるデザイナーに週に1~2回入ってもらう様な契約形態だったり、デザイン経営というものをミニマムな形から始める方法は色々あります。

まとめ:デザイン経営とは?国が推進する最先端の経営方法を簡単に解説

今回は経済産業省と特許庁が中心となって進めている「デザイン経営」をテーマに解説してきました。

デザイン経営は日本でデザインに対して思われていた従来の「デザインは製品の外見の好感度を良くするモノ」という概念ではなく、デザインシンキングを経営に取り入れることを進めるのが目的になります。

ソフトウェアが中心となってユーザー体験の質が命運を握っている状況ではこのデザイン経営を上手く進められるかが重要で、特に中小企業はミニマムな形からでもこの考えを取り入れて進めるのが大切です。

という感じでデザイン経営宣言デザイン経営ハンドブックの中身を合わせつつかみ砕いて解説してきました。なかなか国の資料って読む気にならないですが、少しでも伝わったら良いなと思います。

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