有料で購入しても使いたいおすすめの日本語和文フォント・メーカー・金額を紹介|デザイナーが解説

実はデザインワークのツールの中でデザインソフトの次に重要なのは「フォント」だと思っています。

例えばプレゼンを作る時にもフォントの質で見栄えは大きく変わります。無料のフォントでもいいモノはありますが、有料のフォントは見やすさだったり印象の与え方等の部分で重宝することが多い印象です。

しかも、無料のフォントだと商用利用(商売としてのデザインなどに使う事)が禁止だったりするケースも多いので、そういったライセンス的な部分も考慮して有料フォントを使う機会というのは多いですね。

そこで今回は特に重宝している日本語和文の有料フォントについておすすめのモノと金額を紹介します。

著者 荒木大地  / グラフィックデザイナー / ▸Twitter (@d_arakii)

博士号を取得後、東京大学にて特任助教として研究と教育に従事。在学時よりデザインの業務を開始しデザイン事務所を設立。Adobe Creative Residency (2021)

有料フォントの使い方|定額モデル(サブスク)と買い切りモデル

有料フォントを使う為には大きく分けて定額モデル(サブスク)と買い切りモデルの2種類があります。

・定額モデル(サブスク):年間使用料を支払うことで規定フォントが自由に使える(比較的安価)

・買い切りモデル:フォントの書体やウェイトを指定して購入すると永続的に使える(比較的高価)

基本的にフォントって想像しているよりも高いお買い物です。数千の文字(漢字・ひらがな・カタカナ・英字)を統一感を持たせつつ全部デザインしているワケなので、よくよく考えれば当たり前ですよね。

定額モデルは年間契約で毎年使用料が発生するけど色々なフォントを使えてフォント数のわりに安価な価格設定です。買い切りモデルは永続的につかえるけれど、1つのフォントの価格は高価になっています。

昔は買い切りモデルの方が主流だったと思いますが、現在は定額モデルが主流(どの業界もそうですが)になっていて、主力のフォント商品は定額モデルを契約しないと使えないというメーカーもあります。

メタ的に考察すると、毎年一定額が安定して手に入る事で税金対策的にも良いし、フォントの性質的に更新されるわけでは無いから買い切りだといずれ頭打ちするし、犯罪ですけれどフォントデータをコピーされる危険があるし、定額モデルの方がフォントメーカー的には確実に良いモデルになっているはずです。

利用者的にどちらが良いというのは無いですが、明らか使うフォントが限られてるのであれば買い切りで、色々な種類をバランスよく使ったり買い切りできないフォントがある場合には定額を選びましょう。

フォントメーカー別のおすすめ有料日本語フォントと金額

アドビ|Adobe

・定額モデル|Adobe CC(Adobe Fonts):65,760円(1年間)

AdobeはPhotoshopやIllusttrator等クリエイティブ関係のソフトメーカーですが、Adobe CCを契約している人が使える「Adobe Fonts」というサービスで様々なフォントを自由に使う事が可能です。

Adobeは自社でのフォント開発も行っていますし、様々なフォントメーカーと契約していて日本のメーカーのフォントも使う事ができます。クリエイターはまずココから有料フォントを使っていきましょう。

・見出しゴMB31

・見出しミンMB31

・リュウミン

・新ゴ

・漢字タイポス

・貂明朝

・どんぐり かな

・TA 方眼

・筑紫A丸ゴシック

個人的におすすめなフォントはコチラで、ウェイト(文字の太さ)は限られていますが、モリサワ・フォントワークス・タイプバンク・Adobeといったメジャーなフォントメーカー系のフォントが使えます。

王道系のゴシック体・明朝体に加えて、少しデザイン要素の入った書体まで幅広く日本語のフォントを取り扱っているので結構ココにあるフォントだけでもデザインに使えるフォント幅はだいぶ広がりますね。

Adobeと契約せずにフォントだけ契約しているというケースはデザイナー・クリエイターとしては珍しいと思うので、ほぼ全ての人が使えるフォントであるというのは差別化としては弱めではありますね。

モリサワ|MORISAWA

・定額モデル|モリサワパスポート:49,800円(1年間)

・買い切りモデル|Select Pack:20,000円(1ウェイト)

日本の大手フォントメーカーですが、全部使えるモリサワパスポートと買い切りできるSelect Packの両方が扱われています。しかも、買い切りできるフォントには大人気フォントも含むのでおすすめです。

モリサワパスポートはめちゃくちゃ良いし契約してる人も多数ですが、価格的に高いのでデザイナーでも契約できていない人は多いです。コツコツSelect Packで買い集めたりする人も結構いると思います。

・A1ゴシック

・A1明朝

・ゴシックMB101

・すずむし

・フォーク

Select Packで単品買いするなら、この辺りの代表的なモリサワフォントを狙うのが良いと思います。Select Pack 5だと1フォントあたり約16,000円で購入できるのでまとめ買いなら結構お得ですね。

ちなみに、ライセンス関係も商用で比較的自由に使えますし、フォントメーカー大手の貫録を感じます。

モリサワのフォントに関しては下記記事で特集して扱っていますので、詳しくはコチラでご覧ください。

関連記事「モリサワフォントを使うならどれがおすすめ?Select Packで選ぶ書体とウェイトは

フォントワークス|Fontworks

・定額モデル1|LETS:入会金 30,000円+36,000円(1年間)

・定額モデル2|mojimo-manga:3,960円(1年間)/  mojimo-live:9,800円(1年間)

・買い切りモデル|フォントワークスOpenTypeフォント:18,000円(1ウェイト)

フォントワークスも日本の大手フォントメーカーで、比較的契約のモデルの種類が多いのが特徴です。

良く言えば自分の選びたい様にプランを選べるし、悪く言えば色々あってどれを選べばいいか分かりにくい感じです。個人的にフォントワークスは王道書体よりデザイン書体の方がめちゃ好きでよく使います。

ただ王道系でも「筑紫シリーズ」は好きで、デザインの中でもよく使うのでなかなか難しい所ですね。

買い切りモデルで選択できるのは「ロダン・マティス・スーラ・セザンヌ・ユトリロ・クレー・グレコ」の7個のフォントワークスの王道書体で、この辺りは好みの問題ですが個人的にはあまり使わないです。

ウェイトは限られていますが「Adobe Fonts」でもほとんどの買い切りモデルが使えるのもあります。

定額モデルのLETSは入会金で初年度は少し高いという感じで、3年契約だと年24,000円になるので定額プランの中では長期的に見るとお安い方ですね。ただ、最近よく見るのはmojimoシリーズの方です。

mojimoシリーズは上で紹介した以外にも色々ありますが、個人的にはこの2つが良いかなと思います。普通にデザインに使う人はmangaでYouTubeでも使う人はmojimo-liveを選ぶのがおすすめですね。

まず収録されているフォントの種類が違ってそれぞれのテーマに合ったデザイン書体がメインに入っています。また、ライセンス範囲が違っていて、商用のYouTubeに使えなかったり細かい部分が違います。

・パルラムネ

・カラット

・コミックレゲエ

・コミックミステリー

・ドット明朝

・ラグランパンチ

・ベビポップ

・フューリー

・マカロニ

・コメット

・つばめ

mojimoシリーズでも使える個人的に好きなフォントはこの辺りですね。それぞれ個性が強いので、本文の様な長文で使う事は少ない書体ではありますが、タイトル部分や目を惹くデザインで使いやすいです。

あと、フォントワークスで忘れてはいけないのは「マティスEB」というエヴァで使われているフォントです。この「マティスEB」単体で色々売られてますが、基本的に商用利用不可なので注意しましょう。

Type Project

・定額モデル|TPコネクト:30,000円(1年間)

・買い切りモデル|AXIS Font:25,470円 or 20,750円(1ウェイト)

Type Projectは高品質なフォントを提供しているメーカーで基本的に定額モデルを扱っています。

契約して使用できるのは「AXIS Font・AXIS Latin Pro・AXISラウンド・TP明朝・TPスカイ・濱明朝」と他メーカーと比べると少ない印象ですが1つ1つ品質は高く、特にAXIS Fontは有名で人気です。

・AXIS Font

個人的におすすめしたいのはやはりAXIS Fontで、雑誌を全てこのフォントで作れる様にデザインされているので、オールラウンダーでスタイリッシュな印象を与えてくれるフォントに仕上がっています。

AXIS Fontのみ、AXISのサイトで単品販売されていて購入することも可能で、個人的には「R・M・B」辺りのウェイトを買ってしまうのがおすすめです。TP明朝・濱明朝も個人的には好きですけどね。

SCREEN

・買い切りモデル|ヒラギノ基本6書体セット:36,850円

SCREENは「Mac」で採用されている「ヒラギノフォント」を制作した会社で販売も行っています。

普段からMac PCを使っているユーザーは特に別途で購入する必要はないですが、WindowsのPCには「ヒラギノフォント」はインストールされていないので使うためには、別途で購入する必要があります。

<ヒラギノ基本6書体セット>

 

・ヒラギノ明朝体 W3/W6

・ヒラギノ角ゴシック体 W3/W6/W8

・ヒラギノ丸ゴシック体 W4

買い切りのモデルになるので、個別にウェイト別に購入するのもアリですが、MacのOSに搭載されているフォントが入っている「ヒラギノ基本6書体セット」を購入するのが使い勝手的にもおすすめですね。

ヒラギノは「とりあえず」で使うにはピッタリというか、明朝体かゴシック体かどちらを使うべきかさえ判断できれば、そのヒラギノフォントを使えば大体いい感じに見えるので、使う為の難易度も低めです。

例えば「Windowsのパワポでスライドをよく使うけどフォントを改善したい」みたいな時にこのパックを購入すると使いやすいし、フォントも見やすくなるのでグッとスライド資料の質が上がると思います。

七種泰史(個人デザイナー)

・買い切りモデル|DSきりぎりす:16,500円(1フォント)

七種泰史さんはデザイナーさんで、個人で作成されたフォントを様々なサイトで販売されています。

様々な数多くのフォントを制作されていますが、七種さんのフォントはフォント名に合わせて書体の雰囲気を作り込んでいるので、ユニークなデザインのフォントが多く、作品に取り入れると目を惹きますね。

・DS きりぎりす

・DS くるみるく

・DS かざぐるま

特に有名なのは「DS きりぎりす」で特徴的なフォントなので多くの場所で目にしている事に気づくと思います。他にも特徴的なフォントは色々あって、特に上記のモノは個人的に好きなフォントになります。

1つだけ購入するならやはり「DS キリギリス」かなと思います。人気だという事もありますが、個性的な雰囲気の中でもしっかりと文字としての視認性も高く、すっきりと見えるので色々と使いやすいです。

ちなみに「TA キリギリス」というカタカナのフォントもありますが、コチラは「DS きりぎりす」の前身のフォントなので、新しい方が欲しいという場合には購入する方を間違えない様に気を付けましょう。

MOJI

・定額モデル|MOJIパス:30,000円(1年間)

MOJIパスはバラエティーに富んだフォントを定額使い放題できるサービスでデザイン書体が多いです。

THE明朝体やTHEゴシック体という感じのフォントは少な目で、どれもアジがあるというかクセのある書体が沢山あるという印象なので、中心となる書体は使える方がオプションで使う感じかなと思います。

・TA ドラミン

・TA ゆるみん

・TA キリギリス

個人的に好きな書体はこの辺りで、どれも個別で買い切りモデルとして購入することも可能(各フォント11,000円)です。先ほどもご紹介しましたが、キリギリスは「DS きりぎりす」の方がおすすめです。

目立つ書体は選びがちですが、まずは王道系の質の良い書体を購入する方を個人的には推奨しています。

ヤマナカデザインワークス

・買い切りモデル|各フォント:5,000円(1フォント)※その他の低価格フォントもあり

ヤマナカデザインワークスでは印象的なフォントを販売していて、無料で使えるフォントだったり有料フォントのmini版を無料で使えたりという感じで気軽に使えるオシャレなフォントを取り扱っています。

・こまどり

・ぱぐのみんちょ

・かなりあ

年々フォントが増えていますが、コチラのフォントがかわいくて使いやすくて好きです。無料ですが「バナナスリップ」フォントが約4,200字収録されていてめちゃくちゃ使いやすいのでコチラもおすすめ。

価格もフォント製品では非常にお安いので、デザイン書体にまずチャレンジする時にもいいと思います。

結局どの有料フォントを契約したり買ったらいいの?

有料フォントをご紹介してきましたが、結局どれにしたらいいの?って思う方もいるかもしれません。

目的だったり用途によっておすすめは違うので「コレだ!」というのは中々示しにくいモノなのですが、もし自分がフォント全部失ったらこうするという個人的な選択の見解だったらお見せする事はできます。

とりあえずAdobe契約しない選択肢はないので、まずAdobe Fontsで、お金が潤沢ならモリサワパスポートを契約するし、お金を節約したくてWindowsなら「ヒラギノ基本6書体セット」を買いますね。

Macならその段階はスキップして(Windowsならヒラギノ買った後)「mojimo-manga」契約しつつ「モリサワ書体・AXIS Font・きりぎりす」辺りから2つ位買い切りで購入するかなという感じですね。

とりあえずある程度予算に余裕があるならAdobe Fontsとモリサワパスポートを契約しつつ、それで補えないフォントをちょこちょこ購入するという感じの流れがスタンダードかなと個人的には思いますね。

まとめ:有料で購入しても使いたいおすすめの日本語和文フォント

今回は自分がデザインワークでも使っている様なおすすめの有料日本語和文フォントをご紹介しました。

わりとメーカーの解説だったり、どのフォントがいくらでどのメーカーで扱ってるかみたいな解説が多くなってしまって、おすすめフォントの個別解説があまりできなかったのが今回少し残念ではありますね。

ただ、意外とどのメーカーで扱ってて金額はいくらかみたいな解説って見ないので、おすすめの有料日本語フォントを示しつつ、それらをご紹介できたのは良かったです。ぜひご活用いただければ嬉しいです。

関連記事「モリサワフォントを使うならどれがおすすめ?Select Packで選ぶ書体とウェイトは