デザイナーがロゴを作る時の流れとポイントを解説|制作過程編【ロゴメイキング】

デザイナーが実際にどういう風にロゴを作っていってるのかという制作過程ってあまり見れません。

ビジネスをされている方でロゴが欲しいと思っている方もやり取りなども含めてどういう風な流れで進むのか気になるポイントだと思うので、今回は実際にご依頼いただいたロゴ制作の過程をご紹介します。

ロゴの作り方というのはデザイナーでも大抵は一緒だとは思うんですが、ラフの時点でどの程度作り込むかとか、提案方法とかそういった細かい所は人それぞれ違うと思うので今回のモノはあくまで1例です。

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▸ロゴのテーマとコンセプトを決めていく

今回、作例として扱うのは「エスアイエム薬局月島店」という薬局の店舗さんのロゴになります。

ご依頼いただいて「全部お任せで」と言っていただくのも信頼という面で嬉しくはあるんですが、あくまで私はデザイナーなので、クライアントさん意思をデザインを用いて表現する代弁者だと思っています。

なので、クライアントさんが何を目標とされているのか意思をお伺いしないと「私のつくった私のロゴ」になってしまうので、その辺りの目標や思いのヒアリングはしっかりとさせていただく様にしています。

本ロゴのケースも何回かお会いしてお話を伺い、補足でご質問に回答いただいて制作を開始しました。

▸ロゴの方向性

・「親しみのある感じ」が希望です。月島に根ざした地元の薬局なので、地域の方に親しみをもって頂けるようなロゴだと嬉しいです。

▸解決したい課題

・元々あった店舗を経営者が変わる形になったので、今まで通っていたお客さんに違和感を与えない様にしつつ新規客も獲得できる様な薬局にしたい。

▸ロゴに込めたいメッセージ性やキーワード

・オルタス(運営会社の使用されている語句)はラテン語で「日の出」といった意味なので、どこかにそのニュアンスがあると嬉しいです。

▸イメージカラーやロゴにしたいモチーフ

・運営会社は基本的に緑色をイメージカラーとしているので、どこかに要素があるといいかもと思います。「基準薬局」という一定の要件を満たした薬局が掲げる看板があるのですが、これに使われている色(赤・青)は避けたいです。既存の薬局という感じのロゴとは全く別物でも構わないです。

この辺りがクライアントさんのご要望の部分で、ラフ案を考える上で特に参考になった部分です。お話した中の印象とこれらのワードから自分の中でキーワードを見つけ出し、ロゴ案のラフ制作に繋げます。

▸キーワードの抽出とラフ制作

ヒアリングの中から今回抽出したキーワード・イメージとしては下記の通りです。

・温かみ
・コミュニケーション
・親しみ
・やわらかさ
・新しさ
・物語

こういったキーワードやイメージを根底において、先ほどクライアントさんからいただいた他の要望なども自分の中に持ちつつロゴのラフ案の構想に取り組んでいきました。とにかく、手を動かしていきます。

ラフスケッチ抜粋になります。量は何倍もありますが沢山載せても仕方ないですし、ラフは全然形になっていなかったりダサかったりするのであまりお見せしたくないんですが、この機会なのでお見せします。

ラフ制作はとにかく手を動かすのが大切だと思っていて、先程のワードを中心に思いつくアイデアを出していきます。紙と鉛筆でされる方も多いと思うんですが私はデジタル(iPad)でやることが多いです。

データ管理的な側面もありますが、紙と鉛筆でやると味が出て「ん?何か良くないか?」って思ってしまいます。ただ、デジタルだと線で誤魔化せないので、自戒を込めて最初からデジタルで作業してます。

▸ロゴのラフ案(初回提案)提出

ロゴのラフを制作して、形として初回提案でご提出したのが下記の3案です。

A案

A案は太陽と月をモチーフにして温かみやコミュニケーションの側面を強く押し出したロゴです。コミュニケーションの象徴でもある「吹き出し」を形作り、一方はオルタスを示す日の出(太陽)もう一方は月島を連想させる月として、その2つの明りが重なる様子を示した場としての薬局をイメージしています。

日が昇っていく感じや月が沈んでいく感じを吹き出しの形を使って表現していて、柔らかな形を作ることで温かみのある会話の重なる場を提供していく事を表現しました。他案と比べて元気な感じのロゴです。

 

B案

B案は”月島”のストーリーを重視したロゴです。元々埋め立て地である「築島」と名付けられたところを、遮るものが無く月がとても綺麗に見える土地でもあった事から月見の名所「月島」となりました。

黄色と緑のグラデーションを重ねていて、外に見える大きな月と内側に描いた島・海・空を表現しています。地域に根ざした薬局の物語をロゴで表現することで老若男女に伝わりやすいモチーフにしました。

柔らかなグラデーションを入れる事で優しい穏やかな雰囲気のロゴになり、落ち着いた印象を与えます。

 

C案

C案は少し既存の薬局っぽさという所から外して、幾何図形っぽいスタイリッシュな雰囲気のロゴに仕上げました。月のある街並みをモチーフにしつつ「くすり」の文字を真ん中に据えたスタイルロゴです。

ロゴのお話する中で、親しみやすさは残しつつも少し他とは差別化したいという事も伺ったので、崩れすぎない範囲で新しい雰囲気を出しました。運営会社の方でも使うかもという事でしたので、月の色味を変えてイメージ展開もしやすい形で、ブランドとしても扱いやすいという点もメリットとしてありました。

 

今回のロゴはシンボルマークの部分をメインにというお話でしたので、ロゴタイプの部分はオリジナルで制作したモノではなく「Fontworks」さんの「つばめ」というフォントを使わせていただいています。

使わせていただいた「つばめ」は比較的クセの強いフォントではありますが、レトロ感と和やかさを感じさせる書体で、地域に根ざした温かみのあるコミュニティー(薬局)という今回のロゴやコンセプトに合うと判断して選びました。今回のラフ案のロゴとも違和感なく、スッと馴染んでくれたと思っています。

▸ロゴの調整と最終案の決定

上手くクライアントさんと意思疎通が取れていなかったりして、方向性やロゴの感じが違っているとラフ案から別のモノを作ることもあるのですが(なるべくそうならない様にヒアリングに時間を使いますが)今回はご提示した中から特にB案を気に入っていただいて、そちらを調整していく方向になりました。

B-1案

 

B-2案

 

B-3案

大枠の変更は特になくていいということでしたので、色味のグラデーションを調整しました。元の案(B-1案)と緑色に寄せたB-2案、青色に寄せたB-3案を用意して、最終的にB-2案が採用となりました。

ヒアリングでも伺っていた運営会社のイメージカラーに近いという点と、緑色がやはり薬局・薬としての印象が強いため認知されやすいという点もありつつ”島”らしさを表現できる色合いに仕上がりました。

コチラのロゴは残念ながら運営者の方が変わってしまって現在は使われていないのですが、下記の様に記事の中で取り上げてご紹介いただいたこともある思い入れのあるロゴなので作例として取り上げました。

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▸ロゴ制作の結果とロゴの効果について

今回のロゴ制作はかなりスムーズに最終決定までいった流れですが、ロゴづくりはわりと長い期間クライアントさんと共同作業の様な形になります。ご予算との兼ね合いもあるので無限にお付き合いする事は出来ませんが、出来るだけロゴに思いを載せられる様にその方の気持ちになって制作する様にしています。

ロゴは多くの場合「投資」で、ビジネスの為に作られるので「利益」を生み出すことが最終目標です。

ただ「利益を生む」のは最終目標であって、手前にクライアントさんが解決したいと思っている課題があるはずです。その課題をロゴ制作を通じて解決する事がわたしの様なデザイナーのお仕事になります。

基本的にデザインにできる事は「伝えたい情報を正しく伝える」という事です。企業やサービスがどういう思いでやっているのか・お客さんにどう思って欲しいのかを正しく届ける為のモノだと思ってます。

その結果として、例えば他の企業と差別化できたり、サービス内容が伝わったり、信頼につながったり、そういった部分のブランディングでじわじわ効果を上げていきます。効果が見えにくくてもクライアント側の解決課題をロゴ制作を通じて解決できたかという事が1つの評価の指標になるのは間違いないです。

今回ご紹介した事案では「今までの顧客にも新規顧客にも上手く馴染むロゴを制作する事」が解決課題という事で、クライアントさんからのフィードバック等の評価も含めて貢献できた事案だと思っています。

まとめ:デザイナーがロゴを作る時の流れとポイントを解説|制作過程編

少し長くなってしまいましたが、以上がロゴの制作過程の1つの例になっています。

結構忘れがちな点ですがロゴを作る事のもう一つ大きな効果があって、それは働く人のモチベーションを上げるという事です。ロゴはWEB・名刺・資料など様々な場所で使われ・触れられるものなので、それが自分達のお気に入りで、自分達を上手く表現できていれば仕事に対してモチベーションが上がります。

直接的効果とは違うかもしれませんが、ロゴは確実に仕事のパフォーマンスにつながるもので「世間に与える印象」よりも「使う人達がどれだけ気に入っているか」という方を重視すべきだと思っています。

最初にも言った通りロゴ制作は人それぞれなので今回の記事がロゴ制作の理解の一助になれば幸いです。

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