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現在盛り上がっているNFT(Non Fungible Token)ですが、意外と簡単に販売・購入ができます。
個人的にはNFTのマーケットが盛り上がるのは良いと思っていますが、作品自体に注目が集まっていない事を少し危惧していて、NFTというモノがクリエイターの活動の幅を広げる手段として確立される前に、変な投資クラスタの人たちに食べ荒らされ尽くして印象が悪くならないかというのが心配ではあります。
ただ、NFTは確実に今後のデザイナー・クリエイターとしての表現の場の1つになっていくはずなので、販売の方法や購入の仕方などを知って実践しておくことが大切なので、ぜひ今回で試してみましょう。
著者 荒木大地 / グラフィックデザイナー / ▸Twitter (@d_arakii)
博士号を取得後、東京大学にて特任助教として研究と教育に従事。在学時よりデザインの業務を開始しデザイン事務所を設立。Adobe Creative Residency (2021)
Contents
NFTとブロックチェーン
・NFT(Non Fungible Token):ブロックチェーン技術を使って1点モノの証明ができるモノ
・ブロックチェーン:取引履歴を暗号化しつつ記録する事ができる技術
NFTとかブロックチェーンって何なの?という事は難しそうなのでスルーしてる人も多いと思います。
ただ、実際はそんな難しい事じゃなくて、ブロックチェーンというのが取引の履歴を暗号化しつつ記録する事ができる技術で、それを使う事で安全にデジタルデータの証明とか取引ができるよね?って話です。
いわゆる仮想通貨はそのブロックチェーンを使ったFT(Fungible Token)で、他の仮想通貨や現金と交換できる代替可能なモノです。一方でNFT(Non Fungible Token)もブロックチェーンを使ってますが、何かに交換できるワケではない代替不可なモノで、絶対的でなく相対的価値を持つ事になります。
要するにNFTを使うと「誰が作った作品・現在の所有者は誰か・過去に誰が所有していたか・いつ売られたのか」など様々なデジタル情報が記録されるので、デジタルデータに資産としての価値が生まれます。
今までは拾い物の画像でも本人が作った画像と変わりは無かったですが、画像をNFT化する事で本人が作った作品としてブロックチェーンの証明が残るので、証明書付きで作品の所有という概念ができました。
NFTの保有と著作権
デザイナー・クリエイターとして作品を販売するという事で個人的にイチバン気になったのはココです。
この辺りの保有と著作権については各プラットフォームの規約を読む必要がありますが、多くの場合に共通するのは、基本的にNFTの販売によって「著作権」が作者から譲渡される様な事は無いという事です。
最大手の「OpenSea」を探してもの辺りの規約やFAQが無いのですが(結構問題だと思うけど)、招待制のNFTサービスの「Foundation」には下記のコミュニティーガイドラインがあるので引用します。
FoundationでNFTを作成して販売する場合
・あなたは、あなたのオリジナル作品の著作権や商標を含むすべての法的権利を保持します。
・作品の複製、配布、展示、派生物の作成が可能です。
FoundationでNFTを収集する場合
・あなたはブロックチェーン上のアートワークを表すNFTを所有しています。
・作品を表示して共有することができます。
・作品は、どのプラットフォームでも、どの仮想空間でも展示できます。
・流通市場で再販または取引することができます。
コチラを見ると、著作権はクリエイターに残り、購入者は作品の保有と展示と再販が可能という事になります。実物のアートでも基本的に著作権を譲渡する様な事は無いので、この辺りは共通かなと思います。
作品とは言ってもNFTの場合、実際には「作品のトークン」を保有する事ができるという事で、実物のモノの売買に生じる「所有権」は発生しないので、あくまでトークンを保有できるという解釈になります。
また、写真素材を使ったグラフィックやコラージュなどを販売する場合には、商用利用というより恐らく「販売」という括りになるので、商用利用可能な素材であってもライセンス的に不可な場合があり、かなり注意する必要があります。海外のフリー素材サイト等を使ってる場合も含めしっかり確認しましょう。
購入者の視点で見るNFTアートの価値
購入者にとってNFTアートのどの部分に価値を見出しやすいのかという点ですが、実物のアートの持つ「手元で鑑賞する」という価値はNFTアートの場合は相対的に低いと思われます。実物の場合には近くで見たり日常で感じられるのは所有者のみですが、デジタルの場合、鑑賞は誰でも同じ様な事が可能です。
一方で展示という意味ではデジタルの方が人にシェアしやすく、みんなに見せるための展示というよりは、自分が保有している事を示す為の展示という意味でNFTアートが価値を持ちやすい様に思われます。
また、実物のアートの購入などと比べても算入障壁が低いので、多くの人が興味を持って購入できるという意味で高値がつく事も多く、再販する事を目的として投資的な活用をする場面でも価値が生まれます。
つまり、アートを単に所有して眺める事の価値がリアルと比べて相対的に低いので、自分が所有してる事を示しやすかったり、投資目的で売れそうなNFTアートが現状だと購入されやすいという事になります。
それらを満たすのが「SNSでアイコンとして使いやすいアート」で、OpenSeaのランキングでも上位を占めているのは様々なキャラクターの顔を中心としたアートで、投資目的でもトレンドになっています。
アートではない部分で言えば「NFTを持ってる人だけが参加できるコミュニティー」関係が人気で、NFTを持っている人だけが曲を聞けたり、イベント参加できたり、そういう特典をつけて販売されています。
デザイナー・クリエイターがNFTを販売する方法
① MetaMask(ウォレット)の作成
ウォレットは仮想通貨を保有しておくためのサービスで、NFTではMetaMaskがよく使われています。
ほとんどの場合にはサービスへの登録がファーストステップだと思いますが、NFTサービスは登録時にウォレットとの連携が必要なので、先に「MetaMask」を作成しておいた方がスムーズに進められます。
MetaMaskの導入はGoogle Chromeの拡張機能に追加する形なのでブラウザ右上にあるメニューから「その他のツール▸拡張機能」を選択して「MetaMask」と検索し「Chromeに追加」すればOKです。
あとはナビゲーション通りに進めていくと完了ですが「秘密のフレーズ」というのは必ずメモしておくようにしましょう。フレーズを失うと中に入ってる仮想通貨を取り出せなくなったりする場合があります。
② OpenSeaへの登録と連携
ウォレットが作成できたらOpenSeaに登録します。「作成」を押した後「MetaMask」を選びます。
サインインを求められるのでサインインして、その後、右上に拡張機能のMetaMaskのポップアップなどが出たりしますが、ナビゲーション通りに「署名」などのボタンを押していけば簡単に完了できます。
全て完了すると自分のホーム画面になりますが、名前などの項目が全て未設定になるので「Setting」で自分の名前やメールアドレスなどを設定しておきましょう。コレでOpenSeaの登録は完了になります。
関連サイト「OpenSea」
③ 取引所の口座開設とイーサリアムの購入
NFTアートを出品をする為には「ガス代」と呼ばれる料金を出品時に支払う必要がある場合が多いです。
このガス代はイーサリアムで支払う必要があるので、仮想通貨を購入する事ができる取引所の口座を開設する必要があります。個人的には「コインチェック」をずっと使っていて、便利なのでおすすめですね。
取引所の口座開設には住所の確認などがあって1週間弱ほどかかるので早めに解説手続きをしたいです。
ただ「OpenSea」の場合にはガス代の必要のない出品方法もあります。それは出品時のブロックチェーン通貨選択の際に「ポリゴン」と呼ばれる仮想通貨をイーサリアムの代わりに使って出品する方法です。
ポリゴンを使えばガス代は無料になりますが、色々な部分でデメリットも存在します。まず、ポリゴンを現金化する為には、作品が売れた後に受け取ったポリゴンをイーサリアムに変換する必要がある点です。
正確には受け取るのはポリゴンではなくイーサなのですが、この辺の説明は複雑になるので割愛するとして、とにかく市場で扱われているいわゆるイーサリアムとは別物なので、一旦変換する必要があります。
また、ポリゴンを扱ってる市場がイーサリアムより小さいので、認知されにくかったり、価格が付きにくかったりというデメリットもあります。なので、本気で取り組むならイーサリアムが推奨されています。
ちなみに「ポリゴンを使うならガス代いらないから取引所の口座は必要ない?」って思うかもしれませんが、仮想通貨を現金化するのであれば取引所を通す必要があるので、あらかじめの開設がおすすめです。
関連サイト「コインチェック」
④ コレクションの作成と作品登録
・コレクション:作品を入れておくカテゴリー的なモノ
・アイテム:実際に販売する事になる作品
OpenSeaにはコレクションとアイテムという2つがあって、コレが結構分かりにくいです。イメージとしてはコレクションという大きな箱を作って、その中に販売するアイテムを入れておくような感じです。
コレクションも複数作れるので、性質ごとにコレクションを作ってアイテムを販売する事もできます。
先にアイテムから作ってしまうと適当なコレクションが作成されて、その中に収容されてしまって移動とか削除が面倒なので、コレクションを作ってからアイテムを作るとスムーズにできるのでおすすめです。
コレクションを作る際に重要なのは「Royalties」項目で、作品が売れた後に再版された時に自分に入ってくる収益のパーセンテージを決められます。初期設定は0になっているのでしっかり入力しましょう。
ちなみに「Royalities」は最大で10%まで設定可能になっていて、購入時に確認をする事が可能です。
どの位のパーセンテージにするかはお好みですが、10%に近いほど再版者の利益は少なくなるので、その辺を考慮して検討しましょう。市場の人気のある作品もパーセンテージについてはホントに多様です。
アイテムを作る際には先ほども開設した「イーサリアム」と「ポリゴン」のどちらを選択するか決める事になります。このブロックチェーンの選択によって販売部分の手順も変わるのでしっかり決めましょう。
⑤ 作品(アイテム)の販売
アイテムを作っただけではまだ販売はされておらず、自分で作品を保有している状態になっています。
作品を選択して詳細画面にいくと、右上に「売る」というボタンが表示されていると思うので、そのボタンをクリックします。この後の販売画面の設定方法は「イーサリアム」と「ポリゴン」で異なってます。
ポリゴンの場合、販売の価格をイーサリアムの価格(1ETH = 約40万円 10月13日時点)で設定し、表示する期間を決めてボタンを押せばOKです。下には手数料と先ほどのRoyalitiesが表示されてます。
イーサリアムの場合、固定金額で販売するかオークションで販売するか選ぶ事ができ、後はポリゴンと同じように進めてボタンを押せばOKですが、完了の前にガス代の支払いをMetaMaskを通じて行います。
ガス代は固定金額では無く、時間帯によって変動があるので安い時間帯などを探して販売するのがおすすめです。販売価格によってガス代は変化しないので、あまり安すぎると売っても最初は赤字になります。再販狙いで「Royalities」を得れば黒字にできるかもしれませんが、手放さなければ赤字のままです。
コチラも現時点での情報にはなってしまいますが、ガス代は0.03~0.05ETH(約12,000~17,000円 10月13日時点)になっています。本当に1分単位でもガス代は変化するので上手く見極めましょう。
おまけ:Foundationで販売する方法
Foundationは敷居が高く、アート性の高い作品が多く販売されているのが特徴のNFTサービスです。
クリエイターも自由に登録できるのですが、作品を販売する為には既に作品を販売している人からの招待が無いと販売する事ができません。なので、今回はFoundationで販売する方法については割愛します。
関連サイト「Foundation」
OpenSeaで販売・購入する時に気をつけたい事
・著作権について明記されていないので顧客とのやり取りには注意する
・著作権や肖像権の違反または偽物の作品を安易に購入しない
・ポリゴンの販売で得たイーサリアムを直接取引所などに送金しない
・いきなり他人から飛んでくるギフト(広告)に慌てない
個人的にOpenSeaで気をつけたい事は上記の4点で、英語のサービスなので注意して使いましょう。
まず著作権については最初に述べた通り、OpenSea自体が公式でアナウンスやガイドラインの設定をしていないので各自で気をつける必要があります。著作権を購入したと勘違いする人も結構いるはずです。
OpenSeaを利用しない場合にも言えますが、クリエイターの方は自分の作品が勝手にNFTにされて販売されてしまうという様なケースも実際あるので、その辺りには常に目を光らせおくのがいいと思います。
また、自分が購入者として参加する場合に、著作権や肖像権を違反している作品を購入すると後で削除されたりする場合もあるし、偽物を高値で購入してしまう様なリスクもあるのでその辺に注意しましょう。
他にもNFTはまだ税制的にも定められていない部分が多く、売買によって得た利益を何の所得に当てはめるのか、資産になるのかなどで支払う税金にも大きく差が出てくるので、不安定な要素も多くあります。
結構やりがちなミスとして、作品を販売して得たポリゴン関連のイーサリアムをそのまま取引所口座などに送金してしまうとロストしてしまう危険性があります。分かりにくいですが、まずポリゴンのイーサリアムを普通のイーサリアムに変換して、その普通のイーサリアムを取引所の口座に送って現金化します。
元々イーサリアムでしか取引をしない人には関係ありませんが、ポリゴンを使う人は気をつけましょう。
また、意外とびっくりするのが他人からいきなりギフト(広告)が飛んでくる事です。OpenSeaではウォレット番号が分かればその人にギフトとしてNFTを送付する事ができ、いつの間にか自分のマイページ内の「Hidden」という自分しか見れないコレクションに勝手にNFTが追加されていることがあります。
コレはハックされて買ってしまったとかではなく、勝手に送られてきただけなので特に問題は無いのですが、大抵の場合はポリゴンで作られた広告目的のNFTなのでちょっとスパム的なモノだと思いましょう。
まとめ:デザイナー・クリエイターがNFT作品を販売・購入する方法
今回はNFTの販売に関して、基本的な知識部分の解説と実際の方法部分についてご紹介してきました。
クリエイターにとっては画期的な技術や市場になる可能性を秘めつつも、一方で芸術性・デザイン性の高い作品よりもソーシャルで使いやすいアートが求められていたり乖離している部分なども多くあります。
とはいえ、全く知らずに触らずに過ごすのはもったいないので、せめて口座開設や登録は済ませておき、NFTの動向を伺ったり、隙間があれば自分も参加してみたりして体験しておく価値は高いと思います。
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