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ロゴを作るという選択肢の中で「クラウドソーシング」を使う方は最近かなり増えつつあります。
クラウドソーシングは主に手軽に「ロゴ」を入手したい人が利用していて、依頼方法としては個別にロゴ制作をお願いするケースと、コンペで多くの方からデザインを募集して決めるケースの2つがあります。
依頼者の目線で見るとコンペ形式は色んな案が集まりそうで良さそうに思えるのですが、実際はどういう感じなのかという事と、その裏側にいるデザイナーはどういう風に取り組んでるのか気になりませんか?
今回は実際にクラウドソーシングに登録してコンペを中心に参加してみた体験談・感想をお伝えします。
Contents
▸クラウドソーシングのコンペ形式とは?
コンペ形式というのは、ロゴ制作に支払える金額やコンセプト等を自由に提示して募集をかけ、集まった作品の中から最も気に入ったものを選んで、そのロゴを作った人だけに金額が支払われる形式の事です。
クラウドソーシングの中でも一部のサービスでのみ「コンペ形式」というのは採用されています。
依頼する側としては、色々な作品から好みのものを選べるという点がメリットとして挙げられますが、金額設定を安くしすぎて好みの作品が集まらなくてもキャンセルは効かないというのがデメリットですね。
▸デザイナーがクラウドソーシングでコンペに参加した体験談と感想
▸価格は一般的なデザイン会社の料金より安い
手軽に依頼できるのがクラウドソーシングの強みなので、金額はデザイン会社などより割安です。
私が見た中で最も安かったのは「1,600円」というロゴ募集で、手数料を引かれると恐らくデザイナー側は「1,500円」程度のお仕事になると思います。逆に高額募集だと「100,000円」辺りの募集です。
個人的な感覚ですが「コンペの高額募集 = デザイン会社の最低依頼額」という感じになっていますね。
例えば1,500円でロゴ制作の仕事を受ける事を考えると、Illustrator・フォントなどのデザイン周りのデバイスやツールなどの日割り金額・事務所の家賃等の経費をリアルに考えると、提案文章などの作成も含めて使える時間は約10~20分程度だと思います。それ以上時間をかけてしまうとおそらく赤字です。
しかも、当然ですがコンペ形式では採用の確証がないので、もう少しかける時間は短縮すべきで、この案件は5~10分くらいの時間で全てを完結させることが望ましいという風に、お金の面では考えられます。
▸依頼内容は情報が少なくて特に〇〇が嫌だった
価格の提示額に大きく幅があることから分かるように、依頼者に関しても幅があって、詳細にプロフィールのある方から、ノープロフィールでロゴ制作の依頼に関する情報だけ載っている場合まであります。
下記記事でも書いたのですが、依頼者側が入力必須になっている情報というのは限られているので、それだけの情報だとコンセプトが固め切れず、ありきたりなロゴになってしまう場合なども多いです。細かくイメージやコンセプトなどを書いてくれている方もいますが、会社名すら書き忘れている方までいます。
依頼という点で個人的にコンペ形式で特に嫌だなと思ったのが、依頼に関しての「追記事項」です。
コンペが開始された瞬間からその情報に合わせてデザイナーがロゴを制作して提案していきますが、募集期間内に依頼者からのロゴ制作の内容に関する追記コメントが掲載される場合が結構な確率であります。
・「ロゴのデザインは◯をメインにして、文字を中に入れるようにしてください。」
・「ロゴの見本を作ったので、これをアレンジして作ってください。」
おそらくデザイナーが提出してきた作品を見て気づいたりして追記したものだと思いますが、こういう重要な情報を後出しする例が非常に多いです。この様な場合、先に提出されているデザインの中からは確実に採用されないワケで、デザイナーがロゴ制作にかけた時間もアイデアも全て無駄になってしまいます。
個別にご依頼いただいている場合にはデザイナー側からしっかりとヒアリングをして、クライアントの方のイメージと離れない様に制作しますし、修正があれば快く応じていいロゴに仕上げていきますが、採用確約がないコンペで情報を後出しされると1人のデザイナーとして非常に腹が立つのは間違いないです。
クラウドソーシングのコンペに参加しようと思っているデザイナーの方は募集期限が近いコンペに参加するのがいいと思います。流石に残り1, 2日でコンセプトが大きく違う事を提示される事は無いはずです。
▸コンペに応募されているロゴデザインについての率直な感想
デザイナーとして他の方の作ったロゴ作品に口出しするのはおこがましい部分もありますが、客観的に見て率直に感想をお伝えできればと思います。その辺りについてはどうかご理解いただければと思います。
コンペでは依頼者が非公開に設定している場合を除いて、応募されている作品を見ることが出来ます。参加したモノも含めざっと見ていた感想として、金額が高い方が質の高いロゴや作品数自体が集まりやすいのは間違いないです。ただし、受注実績を作るためだと思いますが、低額での募集にも応募はあります。
受注実績が件数で表示されたり、作品がプロフィールに掲載されるようになっていたり、こうした実績が積み重なると個別依頼が来たりするので、競争率の高くない低額コンペにも作品が集まったりします。
私から見ても「いいな」と思うデザインもあるのですが、いくら”高額”といっても採用確約がないコンペ作品に1つ1つ時間をかけていられないので、長く使える事を考えてデザインしたり、業界調査等まで手を回してデザインされていない可能性は高いと思います。”それっぽいロゴ”がどうしても多いです。
▸実際にコンペで採用されるロゴデザインとは?
コンペでは最終的に採用されたロゴ作品が参加者に提示されるのですが、正直「えっ…」となる作品が採用されることも少なくないです。プロから見ると明らかに差がある様な提案でも結果は違ったりします。
デザイン会社などに依頼すると、一定のロゴとしての基準は満たした上で好みのロゴを選べたりするのですが、クラウドソーシングの場合にはそうではないので、その辺りが大きなデメリットだと思いますね。
もちろん依頼者の好みや、提示されていないけど思っているコンセプトに沿っているケースなどもあるかもしれませんが、デザイン的にそこまで洗練されている様には感じないロゴも選ばれる傾向にあります。
平均点以上のロゴを作り続けていればそれなりに採用はされますが、採用されないケースも考えると時間効率は良くないですし、デザイナーが「お仕事」として考えてコンペに取り組むのは厳しいと思います。
▸クラウドソーシングでいいロゴを作るために決めておきたい事
1. 社名・サービス名の意味と事業内容
これは基本だと思いますが、クラウドソーシングなどを見ていると特に記載ないまま募集をかけているコンペを見かけることがあります。個別にデザイナーに依頼する場合にも必ず聞かれることなので、コンペの場合にも必ず書くようにしましょう。ココが無いと見せかけのロゴになってしまう可能性が高いです。
見たり読んだらわかるだろうと思っても、英語だと解釈が異なったり、日本語でも読み方や伝わり方のニュアンスが異なると、コンペでも思ってもない方向性のロゴが集まったりしてしまう危険性があります。
2. ロゴのスタイル
- ロゴマーク:会社やサービスを表したシンボル的なマーク形式のロゴ
- ロゴタイプ:会社やサービス名(文字:タイプ)をアレンジした形式のロゴ
ロゴのスタイルには大きく2つあります。会社名・サービス名を周知するロゴにしたいのか、パッと見るだけで印象的なロゴに仕上げたいのか、というロゴを作る目的につながるので、いったいどちらが好ましいのかはあらかじめ考えておく必要があります。もちろんですが、2つを組み合わせることも出来ます。
詳しいスタイルの違いの解説は下記記事に書いてありますのでご参照いただければと思います。
関連記事「ロゴデザイン制作のご依頼と料金について|MONO JOURNAL」
3. ロゴの配色
ロゴの配色に関しては後からデザイナーの調整が効きやすい部分ではありますが、例えば青系のロゴであれば「誠実な印象を持ってもらうために、少し形も調整しておこう」といったように、色味に合わせて形も調整する場合もあるので、早めに決まっているに越したことはありません。コンペでは必須ですね。
細かな色の指定があってもいいですが、どういう系統の色合いがいいのかというアバウトな情報でもいいのでデザイナーに相談しておけば、それに近い配色を選んでくれるので、なるべく配色の方向性を決めておくと進めやすいです。また、ロゴは単色がいいのか複数色を使うのがいいのか指定した方がいいです。
4. ロゴの使用用途
とりあえず会社・サービスを作るからロゴも作っておきたいという方もいると思うんですが、なるべくなら何に使うのかということも考えてチームで調整した上で依頼する方がいいロゴになる場合が多いです。
例えば「3cm×3cmの商品タグで使うためのロゴ」であれば細かな線を使ったロゴは適してないです。
もちろん、拡大しても縮小しても使えるようなロゴになるようにデザイナーは作りますが「どの位の大きさ以上で使ってください」とか「最低限どのくらい周囲に余白を入れて」使ってくださいという指定がある場合が多いので、作り終わった後に指定のサイズ以下でロゴを使いたいとなっても困ってしまいます。
なので、例えば「Webのロゴとして使用するのと、名刺や封筒印刷物に入れるのに使いたい」ということであればある程度のサイズ感はわかりますし、デザイナーも困ることはありません。なるべく用途を決めておいて、特殊なサイズ感で使う可能性がある場合などにはあらかじめ相談・記載しておきましょう。
5. ロゴを使ってどういう印象を与えたいか
例えば「サービス内容は比較的堅めだし、職業的にお堅い雰囲気を感じられがちだけど、親しみを持ってもらいたい」という依頼であれば、少し柔らかな印象のロゴを提案します。結構重要なポイントですね。
この様な情報がなければ「士業」系の職業であれば、通常はカチッとした印象を与える感じのロゴにしがちですが、それではクライアントの希望したロゴとは少し離れたものになってしまいます。なので、ロゴを見た人にどういう印象を持ってもらいたいかということは伝えた方が希望のロゴに近づきやすいです。
5. 既存の好きなロゴや希望のロゴ
こちらに関しては必ず必要というわけではありませんが、ロゴの方向性を決める上ではデザイナー的に参考になりやすいですし、クライアントとの方向性がずれにくいので、もしあるのであれば画像やURLなどを添付しておくと伝わりやすいですね。ロゴにもスタイル・傾向があるので、それに近づけやすいです。
まとめ:クラウドソーシングでデザインコンペに参加してみた感想
今回は実際にクラウドソーシングでコンペに参加してみた体験談・感想をお伝えしてきました。
依頼者側としてクラウドソーシングのコンペに参加予定の方も、デザイナーがどういう気持ちで作っているのか分かると、クラウドソーシングで依頼しようかどうかということがわかりやすいと思いますし、デザイナーとしてコンペに参加してみようという方に金額面・時間等現状をお伝えできたと思っています。
とにかく、コンペはいい作品を出せば採用されるというわけではないので、時間効率はあまり良くないですし、情報が十分ではない上に後出しされる場合があるのでモチベーションが湧きずらいという点で、デザイナーが副業などの仕事として空き時間で参加するにしても個人的にはあまりおすすめではないです。
ただ、クライアントの方が求めているロゴの市場調査的な側面や、会社では出しにくい自分のスタイルを思いっきり出したロゴを作ったりするのに向いていると思うので、参加してみるのもアリだと思います。
関連記事「自分でロゴを作るためのデザイン用ソフト・サイト・ジェネレーターなどのツールを解説」